今回は准看護学校の情報サイトとしては、避けては通れない話題。
そうです、准看護師制度は廃止されるのか。がテーマです。
准看護師を目指している人、あるいはすでに准看護師として働いている人にとって、これはずっと気になっている話だと思います。
実際、准看護師で検索すると、関連検索ワードに「准看護師 廃止」と出てくるくらいみんなが気になっていることです。
結論から言うと、2026年現在、准看護師制度の廃止は決まっていません。
決まっていませんが、事実として准看護師の学校は減少しています。
准看護師は制度としては残っているけれど、准看護師の学校は毎年のように減っていて、2025年にはたった1年で4つの県から准看護師の学校が消えました。
「廃止は決まっていないのに、事実上なくなりつつある」というのが、いま起きていることの正確な表現です。
この記事では、「准看護師は廃止されるのか」という疑問に対して、厚生労働省・日本看護協会・日本医師会の公的データを使って、何が起きているのかを徹底解説しています。
「准看護師は廃止される」の出どころ
「准看護師は廃止される」という話、どこから出てきたのか知っていますか。
実はこれ、30年前の話です。
1996年、当時の厚生省(現・厚生労働省)が「准看護婦問題調査検討会」という会議の報告書を公表しました。この報告書の中にこう書かれています。
つまり、看護師と准看護師の2つに分かれている資格制度を1つにまとめよう、という提言です。これが「准看護師は廃止される」という話の原点です。
2026年の今、21世紀に入って四半世紀が経っています。統合は実現していません。
この報告書を受けて、厚生省は1997年に日本医師会と日本看護協会に通知を出しています。その中では「准看護学校の質的向上のための検討」と「准看護師の看護師への移行教育の検討」を行うことが示されました。以降、准看護学校の新設は事実上認められなくなり、この方針は現在も続いています。
つまり「廃止に向かう方向性は出されたが、実行されないまま30年が経った」というのが実態です。では、なぜ30年も決着しないのか。
なぜ30年間決着しないのか
准看護師制度の廃止が30年間決まらない理由は、日本看護協会と日本医師会が真っ向から対立しているからです。
看護協会の言い分:「質を上げるべきだ」
日本看護協会は、准看護師制度が創設された当時から「一貫して准看護師養成の停止に取り組んでいる」と公式サイトで明言しています。
看護協会の主張はこうです。今の医療は高度で複雑になっていて、看護師には自分で判断して動ける能力が必要とされている。でも准看護師は法律上、医師や看護師の指示がなければ看護を行えない資格です。保健師助産師看護師法には「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」業務を行う、と明記されています。
看護協会はこの「指示を受けて」の部分を問題視しています。指示がなければ動けない資格では、今の医療現場のニーズに対応できない、というのが看護協会の立場です。
だから、准看護師の養成をやめて、看護師に一本化すべきだと。既存の学校は看護師の3年課程に転換させて、今働いている准看護師には研修や進学の支援をする。看護協会は実際に進学のための無利息奨学金を貸与していて、「准看護師のための進学特設サイト」も運営しています。
医師会の言い分:「人数が足りないのに何を言っているんだ」
対する日本医師会は、公式サイトで「これからも看護師・准看護師の養成・確保に取り組んでいく」と表明しています。
医師会の主張は明快です。看護職員は慢性的に不足している。高齢化で医療ニーズはますます高まる。地域の医療を看護師とともに支えているのが准看護師だ。人が足りないときに、養成の入り口を狭めてどうする——という話です。
30年、平行線
看護協会は「一人ひとりの質を上げるべきだ」と言い、医師会は「まず頭数を確保しないと現場が回らない」と言う。どちらの主張にも根拠があって、どちらも間違ってはいない。だから決着しないまま30年が過ぎました。
- 日本看護協会:「看護職員一人ひとりの知識・スキルを上げるべき」→ 看護師への一本化を推進
- 日本医師会:「人数を確保することが先決」→ 准看護師の養成継続を主張
- 厚生労働省:新設は認めない方針を維持しつつ、制度そのものの即時廃止は決定していない
それぞれの立場がそれぞれの正論を主張しているので、厚労省がはっきりと方針を打ち出さない限り次の30年も決着することはないでしょう。
厚労省は2023年5月に「看護師等確保基本指針検討部会」を設置し、同年10月に30年ぶりとなる基本指針の改定を告示しました。厚労省の需要推計(看護職員需給分科会中間とりまとめ・2019年)では、2025年時点で看護師等の需要は約188万〜202万人。2020年時点の就業者数は約173万人で、最大27万人のギャップがあるとされています。
人が足りないのに養成の間口を閉じられない。でも「指示がなければ動けない資格では今の医療現場のニーズに対応できない」という問いも無視できない。この板挟みが、准看護師制度の廃止が決まらない構造です。
廃止はされていない。でも縮小は止まらない
制度として廃止は決まっていない。でも、数字を見ると「事実上の縮小」は着実に進んでいます。
准看護学校の数は、2005年の295校から2025年には172校まで減りました。入学者数はもっと顕著で、同じ期間に13,325人から3,603人へ。20年で約70%減です。学校数と入学者数の詳しい推移は「准看護師の学校はどれくらい減っている?」で都道府県別データも含めて整理しています。
もっと象徴的なのは、准看護師の養成を完全にやめた県が出てきていることです。
2025年4月時点で、准看護学校がゼロの県は全国で10県あります。
福井県(2008年〜)、沖縄県(2013年〜)、秋田県(2018年〜)、新潟県・岡山県(2021年〜)、山形県(2022年〜)。ここまでは数年かけて少しずつ増えていたのが、2025年には岩手県・和歌山県・鳥取県・高知県の4県が一気に加わりました。
たった1年で4県。このペースが続けば、数年後には「准看護師の学校がない県」のほうが珍しくなくなるかもしれません。
就業者数にも変化が出ています。
看護師・准看護師の就業者数の推移
出典:厚生労働省「衛生行政報告例」各年度版
准看護師(2023年)
25.7万人
▼ 約10万人減
看護師・准看護師の就業者数の推移(2015年〜2023年)
| 年 | 看護師 | 准看護師 |
| 2015年 | 約117.7万人 | 約35.8万人 |
| 2017年 | 約121.9万人 | 約32.3万人 |
| 2019年 | 約126.1万人 | 約30.5万人 |
| 2021年 | 約131.7万人 | 約28.0万人 |
| 2023年 | 約137.3万人 | 約25.7万人 |
※ 衛生行政報告例は2年ごとに公表。間の年は線形補間による推定値です。
准看護師は2015年の約35万8千人から2023年には約25万7千人へ、8年で約10万人減りました。一方、看護師は同じ期間に約117万7千人から約137万3千人へ、約20万人増えています。
制度は残っている。でも学校は減り、入学者は減り、就業者も減っている。看護師・准看護師の養成定員に占める准看護師の割合は、1960年代には約50%だったのが、今はわずか10%です。
「廃止」という政治的な決定がなくても、現実の数字はすでに一方向に動いています。
病院が准看護師を募集する「本音」
准看護師の数が減っているなら、病院はなぜ准看護師を募集しているのか。
日本看護協会が2022年に公表した「准看護師の業務に関する実態調査」に、はっきりした数字が出ています。全国4,801の病院に聞いた調査です。
病院の准看護師募集状況
出典:日本看護協会「准看護師の業務に関する実態調査」(2022年)全国4,801病院
准看護師の募集状況
| 回答 | 割合 |
| 募集していない | 57.4% |
| 募集している | 41.0% |
| 無回答 | 1.6% |
まず、准看護師を「募集している」病院は全体の41.0%。「募集していない」が57.4%で、実は半数以上の病院はそもそも准看護師を募集していません。
で、募集している病院に「なぜ募集しているのか」を聞いた結果がこうです。
准看護師を募集している理由(複数回答)
出典:日本看護協会「准看護師の業務に関する実態調査」(2022年)准看護師を募集している病院 n=1,969
准看護師を募集している理由(複数回答・n=1,969)
| 理由 | 割合 |
| 看護師が不足している | 84.2% |
| 看護師のキャリア支援(進学を前提) | 22.4% |
| 経営上の都合 | 19.8% |
| 准看護師が必要である | 15.1% |
| その他 | 5.3% |
「看護師が不足している」が84.2%でダントツの1位。「准看護師が必要である」と答えた病院はわずか15.1%でした。
ほとんどの病院は「准看護師がほしい」のではなく「看護師が採れないから准看護師も募集している」のが本音です。
このデータこそが、日本看護協会と日本医師会の双方の主張そのものとなっています。
病院は看護師が欲しい、でも人手が足りないから准看護師でも採用している。
看護師が足りていないから准看護師の求人がある。看護師不足が解消する見込みがない以上、准看護師の求人もなくならない。
これがデータが物語っている事実です。
准看護師の求人事情については「准看護師の求人がなくならない理由とは?」で詳しくデータを使って解説しています。
もし廃止されたら、今の准看護師はどうなる?
「准看護師 廃止」で検索する人が一番知りたいのは、たぶんここです。
もし本当に廃止されたら、今持っている准看護師の免許はどうなるのか。いきなり仕事を失うのか。
これについては、日本看護協会がはっきりした立場を示しています。准看護師制度が仮に廃止されても、今の准看護師がすぐに働けなくなることはない、と。
過去に資格制度が変わった事例を見ても、既存の資格保有者を一夜にして無資格にするようなことは行われていません。経過措置が設けられるのが通常です。
看護協会は廃止を推進する側ですが、同時に「今いる准看護師を切り捨てる」とは言っていません。むしろ、研修や進学を通じて看護師へのキャリアアップを支援する方針を打ち出していて、進学のための無利息奨学金や進学特設サイトを整備しています。
まとめ
准看護師制度が近いうちに「法律上の廃止」という形で終わる可能性は、個人的には低いと見ています。看護師不足が深刻な状況で、養成の入り口をひとつ潰す決定を政治的に出せるとは思えないからです。
コロナのような大きな出来事があっても、その後大きな動きがないので余程のことがない限りは大きく変化があるとは思えません。おそらくは、このまま少しずつ准看護学校が減少していくことで、次の10年20年で結果的に廃止に向かう可能性が高いのではないでしょうか。
でも、「制度は残っているのに学校がなくなって、実質的に准看護師が消えていく」という未来は、もう始まっています。2025年に4県から一気に学校がなくなったペースを見ると、これは減速する気配がありません。
これから准看護師を目指す人は、自分の住んでいる県にまだ学校があるかどうか、それがいつまで続くかを早い段階で確認しておいたほうがいいと思います。学校の現状は「准看護師の学校はどれくらい減っている?」で都道府県別のデータも含めて整理しています。
准看護師として働きながら看護師を目指すルートは今も残っていますし、厚労省の需要推計を見る限り、看護師になれば仕事がないという心配はまずありません。年収の差が気になる人は「准看護師の年収をデータを元に徹底解説」も参考にしてみてください。
制度が残っている今のうちに、自分にとってベストな選択肢を考える。先延ばしにしていると、学校がなくなってから後悔することになりかねません。